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ヨーロッパ退屈日記 / 伊丹十三 / 文藝春秋 / 1967年2版 / 174x115mm / 258ページ / ソフトカバー / 2,500円+250円=2,750円
※状態、ジャケット角橋にスレはございますが、他に目立つダメージはございません。
●内容、
1961年、俳優としてヨーロッパに長期滞在した著者は、語学力と幅広い教養を武器に、当地での見聞を洒脱な文体で綴り始めた。上質のユーモアと、見識という名の背骨を通した文章は、戦後日本に初めて登場した本格的な「エッセイ」でした。山口瞳は本書をこのように推しました。「私は、この本が中学生・高校生に読まれることを希望する。汚れてしまった大人たちではもう遅いのである」。
巻頭の「わたくしの職業」をご紹介。
イギリスふうお洒落、なんていう言葉を耳にしたこがあった、と思うのだが一耐何をさしていったことなのだろう。今日、わたくしは、白いヘルメットにプリーツ・スカート、ハイ・ヒール、そして、これは一つ非常に洒落たつもりで、紫のストッキングをはいたというご婦人が、単車を乗り捨てて、教会に入って行くのを目撃したのだが、どうですか、この眼で見ても、わたくしなんか「まさか!」と呟いたくらいです。でも、イギリスでは、これはむしろ典型的な一例であり、従って人目も惹きませんでした。
貸自動車屋へ行って書式に書き込みを終り、受付けの男に渡すと、わたくしの職業を見て車は貸せない、とこういうのです。彼は、サモン・ピンクの皮膚に藁色の髪をした、雀斑の多い青年で、鶯の糞色の背広、血膿色のネクタイ、それにブルーの方眼のシャッを着ていたのですが、その男が、映画関係の人間には車を貸すことができない、なぜならば、貸自動車屋の加入している保険は報的リスクの少ないものであり、従って映画人は保険の対象になり得ない、とこういうのです。
酔って人を働き殺すような先輩たちのお臨で、思わぬ被害を蒙ったわけですが理は先方にありそうです。そこで、わたくしはまた商業デザイナーでももある、その方を書き込んだらどうだろう、と訊ねると,それもやはり不可能である、なぜか、理由は簡単、わたしがあなたを映画人と知ってしまったからだ、というわけで今日はむしろ教訓的一日であったと申せましょう。
因みに、その書式の年齢の項は、二十五歳以下と以上という、そのどちらかに丸をつければいい仕組で、御婦人のお客に対する周到な心遣いがみられたのであります。